統計力学2
理学部物理学科専門教育科目, 大阪大学, 理学部, 2024
専門科目、水曜日2限、理D303教室
スケジュール
10月2日
イントロ: 統計力学2で学ぶこと
縮退した気体と粒子の統計性: 自由粒子におけるエントロピーの破綻
10月9日
縮退した気体と粒子の統計性: 波動関数の対称性と粒子の統計性
10月16日
縮退した気体と粒子の統計性: 占有数とボース分布関数、フェルミ分布関数
理想フェルミ気体: 理想フェルミ気体としての金属中の電子
10月23日
理想フェルミ気体: 絶対零度での状態、有限温度の性質、パウリの常磁性
10月30日
理想フェルミ気体: パウリ常磁性、ランダウ反磁性
11月6日
理想ボース気体: 理想ボース気体、絶対零度近傍の性質とボース-アインシュタイン凝縮
11月13日
理想ボース気体: 絶対零度近傍の性質とボース-アインシュタイン凝縮(つづき)、圧力とエネルギー・比熱
11月20日
理想ボース気体: 圧力とエネルギー・比熱(つづき)、相対論的ボース気体
11月27日
(月曜日の振替で講義無し)
12月4日
相互作用のある系: 実在気体、粒子密度関数と粒子分布間数
Quiz
解答はCLE経由で提出すること。手書き文書のスキャン、Word文書、Tex文書など形式は問わないが、 最終的に提出時には一つのpdfファイルにまとめて提出すること。 基本的に提出締め切りは、出題日の一週間後の10時30分とします。
Quiz 1(10月9日出題)
\( N=2 \)の自由粒子系で一粒子固有状態のラベルが\( k=1,2,3 \)の互いに異なるエネルギーをもつ3状態のみしか取らない場合を考える。 全体のエネルギー固有関数 \(\begin{equation*} \Psi_{k_1,k_2}(\boldsymbol{q}_{A},\boldsymbol{q}_{B}) = \phi_{k_1}(\boldsymbol{q}_{A}) \phi_{k_2}(\boldsymbol{q}_{B}) \end{equation*}\)
に対し、粒子が区別できるとしたマクスウェル・ボルツマン統計では 微視的状態は \(\begin{gather} \Psi_{1,1}(\boldsymbol{q}_A, \boldsymbol{q}_B)\\ \Psi_{2,2}(\boldsymbol{q}_A, \boldsymbol{q}_B)\\ \Psi_{3,3}(\boldsymbol{q}_A, \boldsymbol{q}_B)\\ \Psi_{1,2}(\boldsymbol{q}_A, \boldsymbol{q}_B)\\ \Psi_{2,3}(\boldsymbol{q}_A, \boldsymbol{q}_B)\\ \Psi_{1,3}(\boldsymbol{q}_A, \boldsymbol{q}_B)\\ \Psi_{1,2}(\boldsymbol{q}_B, \boldsymbol{q}_A)\\ \Psi_{2,3}(\boldsymbol{q}_B, \boldsymbol{q}_A)\\ \Psi_{1,3}(\boldsymbol{q}_B, \boldsymbol{q}_A) \end{gather}\) の9こである。
- ボース・アインシュタイン統計での完全対称なエネルギー固有関数を上の波動関数をもとに具体的に表せ。また微視的状態の総数はいくつになるか。さらに具体的に構成したそれぞれの完全対称な関数に対し占有数\( { n_1,n_2,n_3} \)を求めよ。
- フェルミ・ディラック統計での完全反対称なエネルギー固有関数を上の波動関数をもとに具体的に表せ。また微視的状態の総数はいくつになるか。さらに具体的に構成したそれぞれの完全反対称な関数に対し占有数\( { n_1,n_2,n_3} \)を求めよ。
Quiz 2(10月23日出題)
一粒子エネルギー状態密度\( g(E) \)は既知として、絶対零度における粒子数の期待値からフェルミエネルギーの表式を導出せよ。またフェルミエネルギーの値を鉄の場合に計算せよ。
Quiz 3(11月6日出題)
一次元の自由粒子の一粒子エネルギー状態密度を求め、 一次元に閉じこめられた理想ボース気体では、有限温度でボース-アインシュタイン凝縮が起きないことを、三次元の時の議論を参考に説明せよ。
Quiz 4(11月20日出題)
凝縮相\( ( T< T_c ) \)において、励起状態を取っている粒子一つあたりのエネルギーおよびエントロピーを求めよ。
評価
平常点(50%)、および期末試験(50%)で評価する。平常点は、適宜出題する小レポート(Quiz)の提出状況で評価する。 シラバスを参照すること。
参考書、参考文献
- 湯川諭「統計力学」 (日本評論社、2021) (正誤表がhttps://stsykw.github.io/StatisticalMechanics-support/にあります。)
- 田崎晴明「統計力学I,II」(培風館、2008)
- 高橋和孝「熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相」(講談社、2023)
- 清水明「統計力学の基礎I」(東京大学出版会、2024)
演習書
- 久保亮五編「大学演習 熱学・統計力学」(裳華房、1961)
スピン・統計定理
- 井田大輔「現代量子力学入門」(朝倉書店、2021)
実在気体
- 戸田盛和・松田博嗣・樋渡保秋・和達三樹「液体の構造と性質」(岩波書店、1976)