力学詳論I

全学共通教育科目, 大阪大学, 全学共通教育機構, 2020

専門基礎教育科目(理学部)、月曜日3限、共C302教室 KOANシラバス
CLE授業支援システム
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スケジュール

4月20日(第1回オンライン)
オンラインで開講予定、CLE授業支援システムの掲示を見ること。
始めに: 物理学とは。近似について。Taylor展開
質点の運動の記述: 物理量と単位、次元。無次元量。
数学的内容: Taylor展開

4月27日(第2回オンライン)
質点の運動の記述: ベクトル(定義、内積、外積)
数学的内容: ベクトルとその演算(大きさ、内積、外積

5月11日(第3回オンライン)
質点の運動の記述: 位置の表現と、速度、加速度
数学的内容: ベクトルの微分

5月18日(第4回オンライン)
運動の法則: Newtonの運動の法則、力積、慣性の法則
運動方程式の解法: 運動の分解、放物運動
数学的内容: 常微分方程式とその解法1(素直に積分する)

5月25日(第5回オンライン)
運動方程式の解法: 抵抗力を受ける落体の運動(粘性抵抗、慣性抵抗)
数学的内容: 常微分方程式とその解法2(変数分離型)

6月1日(第6回オンライン、この日より時間割時間変更、13時30分から15時まで)
運動方程式の解法: 単振動、減衰振動
数学的内容: 指数関数、三角関数、双曲線関数、常微分方程式とその解法3(定数係数線形常微分方程式,同次/非同次)

6月8日(第7回オンライン、13時30分から15時まで)
運動方程式の解法: 強制振動と共鳴
数学的内容: 常微分方程式とその解法3(定数係数線形常微分方程式の非同次型)

6月15日(第8回オンライン、13時30分から15時まで)
仕事とエネルギー: 保存量、仕事と運動エネルギー、保存力と力学的エネルギー保存則
数学的内容: 線積分、偏微分
中間レポート課題発表

6月22日(第9回オンライン、13時30分から15時まで)
仕事とエネルギー: 保存力と力学的エネルギー保存則、ポテンシャルエネルギーの例

6月29日(第10回オンライン、13時30分から15時まで)
振り子の運動: 平面振り子の極座標表示、微小振幅の運動、有限振幅の運動

7月6日(第11回オンライン、13時30分から15時まで)
振り子の運動: 有限振幅の運動
角運動量保存: 角運動量とモーメント、中心力、面積速度

7月13日(オンライン、13時30分から15時まで)
惑星の運動:万有引力の法則、Keplerの三つの法則、軌道

7月20日(オンライン、13時30分から15時まで)
惑星の運動:軌道の計算とKeplerの法則、Kepler方程式

7月27日(オンライン、13時30分から15時まで)
波動入門: 波動の記述、うなり、波動方程式

8月3日
CLEにて期末レポート課題発表(13時30分)

Quiz

Quiz 1(4月20日出題)
以下の関数をあたえられた点\(a \)のまわりで、与えられた次数までテーラー展開せよ。

  • \( \exp x \)、\(a = 0\)のまわりで3次まで
  • \( \sin x \)、\(a = 0\)のまわりで3次まで
  • \( x^3 \)、\(a=1 \)のまわりで3次まで

Quiz 2(4月20日出題)
以下の物理量の次元を\( L, M, T\)で表せ。無次元量もある。

  • 速度
  • エネルギー
  • 仕事
  • 圧力
  • 動摩擦係数
  • ばね定数

Quiz 3(4月27日出題)
以下、ベクトル\( \mathbf{a}, \mathbf{b}, \mathbf{c} \)は互いに独立な3次元空間中のベクトルであるとする。

  • スカラー三重積に対して以下が成立することを示せ。 \[ (\mathbf{a}\times\mathbf{b}) \cdot \mathbf{c} =(\mathbf{b}\times\mathbf{c}) \cdot \mathbf{a} =(\mathbf{c}\times\mathbf{a}) \cdot \mathbf{b} \]
  • \( \mathbf{a}\times(\mathbf{b} \times \mathbf{c}) \)は外積の定義により\( \mathbf{b}, \mathbf{c} \)が作る平面上にある。 \[ \mathbf{a}\times (\mathbf{b} \times \mathbf{c} )= A \mathbf{b}+B \mathbf{c} \] と書いたとき、係数\(A,B\)を求めよ。

Quiz 4(5月11日出題)
三次元空間中の運動(\(t > 0\))を位置ベクトルをつかって、 \[ \mathbf{r}(t) = x(t) \mathbf{e}_x+y(t) \mathbf{e}_y+z(t) \mathbf{e}_z \] と表す。ただし\(u, \omega, v\) を正の定数として \(\begin{align} x(t) & = u t \cos \omega t \\\ y(t) & = u t \sin \omega t \\\ z(t) & = v t \end{align}\) とする。

  1. 速度ベクトル、加速度ベクトルを直交座標系で求めよ。
  2. 運動の位置ベクトル\( \mathbf{r}(t) \)を円柱座標系\(\{r, \phi, z\}\)および円柱座標系の基本ベクトル \( \{\mathbf{e}_r, \mathbf{e}_\phi, \mathbf{e}_z\} \)をつかって表せ。(円柱座標系は\(xy\)平面に対して極座標、\(z\)座標は直交座標系の軸をそのままつかう座標系である。)
  3. 円柱座標系で、速度ベクトル、加速度ベクトルを求めよ。

Quiz 5(5月18日出題)
質量\(m\)の質点が振動外力を受け、一次元的に運動している。座標を\(x\)として運動方程式は \begin{equation} m \dfrac{d^2x}{dt^2} = A \sin \omega t \end{equation} と書ける。\(t=0\)で\(x(0)=0, \left.\dfrac{dx}{dt}\right\rvert_{t=0} = v_0 \)という初期条件の下、\(x(t)\)を求めよ。

Quiz 6(5月25日出題)
生物の個体数\(N , (N>0) \)の時間的変化を記述するロジスティック方程式と呼ばれる以下のような変数分離型の一階の微分方程式がある。 \begin{equation} \dfrac{dN}{dt} = \gamma N \left(1-\beta N \right) \end{equation} ここで\( \gamma, \beta \)は正の定数である。時刻\( t=0 \)での個体数を\( N_0 \)として、ロジスティック方程式の解を求めよ。

Quiz 7(6月1日出題)
抵抗値\(R \)の抵抗、自己インダクタンス\( L \)のコイル、電気容量\( C\)のキャパシタと起電力\(V \)の直流電源を直列につなぐと、 回路に流れる電流\(I(t) \)は以下の微積分方程式を満たす。 \begin{equation} R I(t) +L \dfrac{dI(t)}{dt} + \dfrac{1}{C}\int_0^t I(t’) dt’ = V \end{equation} ここで\( R, L, C, V\)は時間的に一定であるとし、初期の電流は\( I(0)=0 \)、また初期にキャパシタに電荷が蓄えられていなかったとする。 このとき電流\( I(t) \)を時間の関数として求めよ。

ヒント: この微積分方程式を\( t\)で微分すると、定数係数の2階の線形常微分方程式になる。また微積分方程式に\( t=0 \)を代入すると電流の時間微分に関する初期条件が決まる。

Quiz 8(6月8日出題)
以前に抵抗力を受ける落体の運動を変数分離型として解いた。 ここでは、定数係数線形常微分方程式の非同次型としてといてみよう。 運動方程式は \begin{equation} m \dfrac{d^{2}y }{dt^{2}} = - mg - m \lambda \dfrac{dy}{dt} \end{equation} である。\( g = 0 \)の時、同次であり、\( g \ne 0 \)なら非同次である。

  1. 同次方程式の一般解 \( y_0(t) \)を求めよ。
  2. 非同次方程式の特解\( y_{s} (t) \) をどんな方法でも良いので求めよ。
  3. 全体の非同次方程式の一般解\( y(t) \)を構成せよ。

Quiz 9(6月15日)
(出題なし。代わりに中間レポート)

Quzi 10(6月22日出題)
以下の直交座標系の成分表示で書かれた点\( (x,y,z) \)における二つの力\( \mathbf{F}_{1}, \mathbf{F}_{2}\)について、それぞれ保存力かどうか確認せよ。もし保存力であったなら原点\(O\)を基準点とするポテンシャルエネルギー\(U(x,y,z)\)を求めよ。\(k,h\)は適当な正の定数とする。

  1. \( \mathbf{F}_{1} = k \begin{pmatrix} -y \\ x \\ z\end{pmatrix}\)
  2. \(\mathbf{F}_{2} = h \begin{pmatrix} yz\\ zx\\ xy \end{pmatrix}\)

Quiz 11(6月29日出題)
無次元の変数\( (x,y) \)をつかって運動が \begin{align} \dfrac{dx}{dt} & = -y + ( 1 - x^2 - y^2) x \
\dfrac{dy}{dt} & = x + (1-x^2 -y^2) y \end{align} と記述されたとする。この運動を定性的に調べよう。 変数を極座標で\( x = r \cos \theta, y = r \sin \theta \)と表すと \begin{align} \dfrac{dr}{dt} & = r (1-r^2) \
\dfrac{d\theta}{dt} & = 1 \end{align} となる。これで\( \theta \)の運動は自明になり、また\( r \) は\( \theta \)に依存しないので、\( r\) のみ \( r \ge 0\) の領域で定性的に調べれば良い。 このとき相空間は\( r\) 軸の\( r\ge 0\)の領域となる。

  1. \( r\)軸上\(\dfrac{dr}{dt} = 0\)となる点を\( r\ge 0\)で求めよ。
  2. 領域\( r\ge 0\)上の\(\dfrac{dr}{dt} = 0\)となる点で分けられた2つの領域で\( \dfrac{dr}{dt}\)の符号を調べよ。
  3. 上で調べた符号から、\( r\) の定性的な運動を述べよ。
  4. \( \theta \)のことも含めて\( x,y\) 平面上で運動はどうなるか、定性的に述べよ。

Quiz 12(7月6日出題)
原点を支点として長さ\( \ell \)の質量の無視できる棒で吊られた振り子を考える。 振り子の重りは質量\( m \)であり支点を中心として三次元的に摩擦なく運動できる。 鉛直下向きに重力がかかっており重力加速度の大きさを\( g\)とする。 鉛直上向きに\( z\)軸正の向きを取り、張力の成分を\( ( T_x, T_y, T_z ) \)とすると、運動方程式は \begin{align} m \dfrac{d^2x}{dt^2} & = T_x \
m \dfrac{d^2y}{dt^2} & = T_y \
m \dfrac{d^2z}{dt^2} & = T_z - mg \end{align} となる。ただし\( x^2 + y^2 + z^2 = \ell^2 \)である。 また張力\( \mathbf{T} \)は、棒の向きと平行なので大きさを\( T\)として\( \mathbf{T} = - T \mathbf{r} / \ell\)と書くことができる。 振り子が一般の運動をしている時、\(z \)軸まわりの角運動量\( L_z = x P_y - y P_x\)が保存すること、また\( x, y\)軸まわりの角運動量\( L_x = y P_z- z P_y, L_y = z P_x - x P_z\)がそれぞれ保存しないことを示せ。ただし\( P_x, P_y, P_z \)は運動量のそれぞれの成分の値である。

Quiz 13(7月13日出題)
質量\(m_{1}\)の恒星が、位置ベクトル\(\mathbf{r}_{1}\)にあり、質量\(m_{2}\)の惑星が、位置ベクトル\(\mathbf{r}_{2}\)にある。恒星と惑星は互いに万有引力を及ぼしあって運動しているとすると、 運動方程式は、それぞれ \begin{align} m_{1} \dfrac{d^{2} \mathbf{r}_{1}}{dt^{2}} &= - \dfrac{Gm_{1}m_{2}} { \left\lvert\mathbf{r}_{1} - \mathbf{r}_{2} \right\rvert^{2}} \dfrac{\mathbf{r}_{1}-\mathbf{r}_{2}} {\left\lvert\mathbf{r}_{1} - \mathbf{r}_{2}\right\rvert} \
m_{2} \dfrac{d^{2} \mathbf{r}_{2}}{dt^{2}} & = - \dfrac{Gm_{1}m_{2}} {\left\lvert\mathbf{r}_{1} - \mathbf{r}_{2} \right\rvert^{2}} \dfrac{\mathbf{r}_{2}-\mathbf{r}_{1}} {\left\lvert\mathbf{r}_{1} - \mathbf{r}_{2}\right\rvert} \end{align} となる。このとき、 重心の位置ベクトル\( \mathbf{r}_g = \dfrac{m_1\mathbf{r}_{1} + m_2\mathbf{r}_{2} }{m_1 + m_2} \)はどのような運動をするか。 重心の位置ベクトルに関する二階の微分方程式を書き下し、運動を議論せよ。

Quiz 14(7月20日出題)
原点を中心とする調和振動子ポテンシャル\( U(r) = \dfrac{1}{2} m \omega^{2} r^2 \) に閉じ込められた質量\( m \)の質点の運動を考える。位置ベクトル\( \mathbf{r} \)として\( r=\left\lvert\mathbf{r} \right\rvert \)である。また\( \omega \)を正の定数とする。 力\( \mathbf{F} \)は、 \begin{equation} \mathbf{F} = - \dfrac{\partial U(r)}{\partial \mathbf{r} }= - m \omega^{2} r \dfrac{\mathbf{r}}{r} \end{equation} という中心力になるため、全角運動量が保存し運動は2次元平面内に限られる。2次元極座標をとり、\( r^2 \dfrac{d\phi}{dt}\)は定数\( h\)にとることができる。 万有引力の時と同様に解析し以下の問に答えよ。

  1. 動径\( r \)に対するエネルギー保存の式を書け。
  2. 質点が等速円運動をしているとき、角速度\( \dfrac{d\phi}{dt} \)を求めよ。
  3. また等速円運動の半径が\( \ell \)の時、全力学的エネルギー\( E\)を\(h \)を含まない形で求めよ。

中間レポート課題

CLE上にて6月15日に公開する。

期末レポート課題

CLE上にて8月3日13時30分に公開する。課題は8月7日17時までにCLE経由で提出すること。

評価

期末試験→期末レポート・中間レポート(60%)、及びQuiz等(平常点 40%)で判断する。シラバスに従う。

数学について

物理はトリビアや公式の集合ではなく、数学的にきちんと記述されるものです。 その記述の中では、微分やベクトル、行列などが出てきます。 微分やベクトルは高校の数学の中で習得してるはずのものですが、 行列に関しては大学の線形代数で初めて習う対象です。 講義の中で行列が出てくるところでは適切に補足していくつもりですが、 自習用のために参考書を挙げておきます。

  • 参考書: 長谷川浩司「線形代数(改訂版)」日本評論社 特に第一部は完全に身につけることが必要です。

また、常微分方程式についても重点を置いて取り扱います。参考書を挙げておきます。

  • 参考書: 坂井秀隆「大学数学の入門10 常微分方程式」東京大学出版会

文献

教科書、参考書、演習書、関連図書などをあげおきます。 参考書は、詳しい内容や教科書以外の記述を見たくなった場合に利用してください。 また関連図書は直接講義とは関係ないが、力学やその周辺に関連するものです。 おそらくすべて大学図書館にあります。

  • 教科書: 市村宗武「朝倉現代物理学講座1 力学」朝倉書店
  • 参考書: 藤原邦男「物理学序論としての力学」東京大学出版会
  • 参考書: 前野昌弘「よくわかる初等力学」東京図書
  • 参考書: 十河清、和達三樹、出口哲生「ゼロからの力学I」(岩波書店)
  • 参考書: 十河清、和達三樹、出口哲生「ゼロからの力学II」(岩波書店)
  • 参考書: 戸田盛和「物理入門コース 1 力学」(岩波書店)
  • 参考書: 窪田高弘「力学入門」培風館
  • 参考書: D. Keppner and R. Kolenkow「An Introduction to Mechanics」 Cambridge University Press
  • 参考書: リチャード・ファインマン、ロバート・レイトン、マシュー・サンズ、坪井忠二訳「ファインマン物理学 I 力学」岩波書店
  • 演習書: 後藤憲一、山本邦夫、神吉健共編「詳解力学演習」共立出版
  • 演習書: 江沢洋、中村孔一、山本義隆著「演習詳解力学」日本評論社
  • 関連図書: ゴールドスタイン「古典力学」吉岡書店
  • 関連図書: エルンスト・マッハ、岩野秀明訳「マッハ力学史 古典力学の発展と批判(上、下)」ちくま学芸文庫
  • 関連図書: 山本義隆「古典力学の形成 ニュートンからラグランジュへ」日本評論社
  • 関連図書: 山本義隆「重力と力学的世界 古典としての古典力学」現代数学社