統計力学2
理学部物理学科専門教育科目, 大阪大学, 理学部, 2023
専門科目、水曜日2限、理D303教室
試験
2月7日2限、A4サイズ1枚両面の手書きメモの持ち込み可。
iPadなどを使い手書きでメモを作成し印刷するのは構わないが、 印刷した際に手書きできるレベルの文字サイズにすること。縮小印刷不可。 メモは学籍番号と氏名を明記し試験終了時に答案とともに提出すること。
CLEのほうに過去問をアップロードしました。参考にしてください。
スケジュール
10月4日
アンケート
イントロ: 統計力学2で学ぶこと
縮退した気体と粒子の統計性: 自由粒子におけるエントロピーの破綻
10月11日
縮退した気体と粒子の統計性: 波動関数の対称性と粒子の統計性
10月18日
縮退した気体と粒子の統計性: 占有数とボース分布関数、フェルミ分布関数
10月25日
理想フェルミ気体: 理想フェルミ気体としての金属中の電子、絶対零度での状態、有限温度の性質
11月1日
理想フェルミ気体: 有限温度の性質、パウリ常磁性
11月8日
理想フェルミ気体: パウリ常磁性(つづき)
理想ボース気体: 理想ボース気体、絶対零度近傍の性質とボース-アインシュタイン凝縮
11月15日
理想ボース気体: 絶対零度近傍の性質とボース-アインシュタイン凝縮(つづき)、圧力とエネルギー・比熱
11月22日
理想ボース気体: 圧力とエネルギー・比熱(つづき)、相対論的ボース気体
11月29日
(月曜日の振替講義日なので講義はありません)
12月6日
相互作用のある系: 実在気体、粒子密度関数と粒子分布間数
12月13日
相互作用のある系: Lennard-Jones相互作用とvan der Waals気体
12月20日
相互作用のある系: 気液共存状態
1月10日
相転移と臨界現象: 相と相転移
1月17日
相転移と臨界現象: 臨界現象と臨界指数
1月24日
相転移と臨界現象: 磁性体の臨界現象
1月31日
相転移と臨界現象: 磁性体の臨界現象、臨界現象の普遍性
2月7日
期末試験
Quiz
解答はCLE経由で提出すること。手書き文書のスキャン、Word文書、Tex文書など形式は問わないが、 最終的に提出時には一つのpdfファイルにまとめて提出すること。 基本的に提出締め切りは、出題日の一週間後の10時30分とします。
Quiz 1(10月11日出題)
\( N=2 \)の自由粒子で一粒子固有状態が\( k=1,2,3 \)の互いに区別できる3状態のみしか取らない場合を考える。 全体のエネルギー固有関数 \(\begin{equation*} \Psi_{k_1,k_2}(\boldsymbol{q}_{A},\boldsymbol{q}_{B}) = \phi_{k_1}(\boldsymbol{q}_{A}) \phi_{k_2}(\boldsymbol{q}_{B}) \end{equation*}\)
に対し、粒子が区別できるとしたマクスウェル・ボルツマン統計では 微視的状態は \(\begin{gather} \Psi_{1,1}(\boldsymbol{q}_{A}, \boldsymbol{q}_B)\\ \Psi_{2,2}(\boldsymbol{q}_{A}, \boldsymbol{q}_B)\\ \Psi_{3,3}(\boldsymbol{q}_{A}, \boldsymbol{q}_B)\\ \Psi_{1,2}(\boldsymbol{q}_A, \boldsymbol{q}_B)\\ \Psi_{2,3}(\boldsymbol{q}_A, \boldsymbol{q}_B)\\ \Psi_{1,3}(\boldsymbol{q}_A, \boldsymbol{q}_B)\\ \Psi_{1,2}(\boldsymbol{q}_B, \boldsymbol{q}_A)\\ \Psi_{2,3}(\boldsymbol{q}_B, \boldsymbol{q}_A)\\ \Psi_{1,3}(\boldsymbol{q}_B, \boldsymbol{q}_A) \end{gather}\) の9こである。
- ボース・アインシュタイン統計での完全対称な波動関数を、上の波動関数をもとに具体的に表せ。また微視的状態の総数はいくつになるか。
- フェルミ・ディラック統計での完全反対称な波動関数を、上の波動関数をもとに具体的に表せ。また微視的状態の総数はいくつになるか。
Quiz 2(10月25日出題)
一辺\( L \)の立方体に閉じ込められた自由粒子の一粒子エネルギー状態密度\( g(E) \)を導出せよ。 これをつかって電子がスピン\( 1/2 \)を持つことを考慮し、絶対零度における粒子数の期待値から フェルミエネルギーの表式を導出せよ。
Quiz 3(11月15日出題)
二次元の自由粒子では一粒子エネルギー状態密度が一粒子エネルギーに依存しないことを示し、 二次元系の有限温度ではボース-アインシュタイン凝縮が起きないことを、三次元の時の議論を参考に説明せよ。
Quiz 4(11月22日出題)
凝縮相 (\( T < T_c \)) での内部エネルギー\( E \)の式は講義中に導出した。 これを用いて、凝縮相での非凝縮状態(励起状態)にある粒子1つあたりのエネルギー \(E/(N-N_0) \) を求めよ。
Quiz 5(12月6日出題)
ある確率分布に従う確率変数\( A\)に対し、 以下のように、左辺の\( \beta \)に対する級数展開を通じて、 \( \ell \)次のキュムラント \( \langle A^\ell \rangle_c \) を定義する。 \(\begin{equation} \log \left\langle e^{-\beta A} \right\rangle = \sum_{\ell=1}^\infty \dfrac{(-\beta)^\ell}{\ell!} \langle A^\ell \rangle_c \end{equation}\) このとき、以下が成立することを示せ。 \(\begin{align} \langle A \rangle_c &= \langle A \rangle \\ \langle A^2 \rangle_c &= \langle A^2 \rangle - \langle A \rangle^2 \\ \langle A^3 \rangle_c &= \langle A^3 \rangle - 3 \langle A^2 \rangle \langle A \rangle + 2 \langle A \rangle^3 \end{align}\)
Quiz 6(12月20日出題)
ファン・デル・ワールスの状態方程式 \(\begin{equation} p = \dfrac{\rho k_\mathrm{B} T}{1-v_0 \rho} - \epsilon v_0 \rho^2 \end{equation}\) をつかって、等圧膨張係数\(\alpha = \dfrac{1}{V} \left(\dfrac{\partial V}{\partial T}\right)_{p,N} \) が、ファン・デル・ワールス気体では \(\begin{equation} \alpha = \dfrac{1-v_0 \rho}{T-T_s(\rho)} \end{equation}\) となる事を示せ。\( T_s(\rho) \)は講義で定義したスピノダル温度である。
評価
平常点(50%)、および期末試験(50%)で評価する。平常点は、適宜出題する小レポート(Quiz)の提出状況で評価する。 シラバスを参照すること。
参考書、参考文献
- 湯川諭「統計力学」 (日本評論社、2021) (正誤表がhttps://stsykw.github.io/StatisticalMechanics-support/にあります。)
- 田崎晴明「統計力学I,II」(培風館、2008)
- 菊池誠「統計力学のはじめの一歩」(統計力学1の教科書、2023)
スピン・統計定理
- 井田大輔「現代量子力学入門」(朝倉書店、2021)
実在気体
- 戸田盛和・松田博嗣・樋渡保秋・和達三樹「液体の構造と性質」(岩波書店、1976)