電磁気学詳論II
全学共通教育科目, 大阪大学, 全学共通教育機構, 2024
専門基礎教育科目(基礎工学部(システム、情報)、理学部(数学))、火曜日1限、共A302 CLE授業支援システム
試験通知
8月6日(火曜日、1限)に期末試験を実施します。詳細はCLEに掲示します。
スケジュール
4月16日
電磁気学詳論Iの復習
真空中の電磁波: 波動方程式の導出とその解
4月23日
真空中の電磁波: 電磁波としての性質、エネルギーと運動量
4月30日
真空中の電磁波: 偏光
電気伝導と導体の性質: 導体、電荷の保存則、電気伝導
5月7日
電気伝導と導体の性質: ジュール熱、ホール効果
誘電体: 分極、電束密度、誘電率
5月14日
誘電体: 境界条件、エネルギー、具体例
5月21日
磁性体: 磁化、磁化電流、透磁率、境界条件
5月28日
磁性体: エネルギー、具体例
6月4日
磁性体: 強磁性体
超伝導体と磁場: 超伝導
6月11日
(月曜日の振替日により休講)
6月18日
超伝導体と磁場: 完全反磁性、ロンドン方程式
物質中の電磁波: 物質中のマクスウェル方程式、屈折率
6月25日
物質中の電磁波: 反射、屈折、内部全反射、エバネッセント光、反射波の位相
7月2日
物質中の電磁波: 導体と電磁波
回路: 起電力、定常電流回路の基礎方程式、キルヒホッフの法則
7月9日
回路: 準定常回路、LC回路、RC回路、RLC回路
7月16日
回路: RLC回路、交流回路、実効値、複素数を使った表現
7月23日
回路: 合成インピーダンス、共鳴、フィルター回路
7月30日
回路: 同軸ケーブルの等価回路
講義全体のまとめ
8月6日
期末試験
Quiz
解答はCLE経由で提出すること。手書き文書のスキャン、Word文書、Tex文書など形式は問わないが、最終的に提出時には一つのpdfファイルにまとめて提出すること。 基本的に提出締め切りは、出題日の一週間後の正午とします。
Quiz 1(4月16日出題)
\( \boldsymbol{k} \) ベクトルの向きに速度\( c\)で進行する波は \[ f(\boldsymbol{k} \cdot \boldsymbol{r} - c \left\lvert \boldsymbol{k} \right\rvert t) \] と書ける事を講義中にみた。 位置ベクトル\( \boldsymbol{r} \)を\( \boldsymbol{k} \)ベクトルと平行な\( \boldsymbol{r}_0 \) ベクトル、および直交する\( \boldsymbol{r}’ \)に \[ \boldsymbol{r} = \boldsymbol{r}_0 + \boldsymbol{r}’ \] と分解する。\( (\boldsymbol{r}_0,t) \)を固定した時、\( \boldsymbol{r}’\)で決まる平面上では\( f \)が同じ値を取ることを示せ。これはこの形の波が平面波として伝わっていることを表している。
Quiz 2(4月23日出題)
Poyntingベクトルの物理的な次元を計算し、確かにエネルギー流束の次元をもっていることを確認せよ。 同様に、Poyntingベクトルを光速の二乗で割ったものが運動量密度の次元を持っていることを確認せよ。
Quiz 3(4月30日出題)
Drudeモデルで電気伝導率\( \sigma \)は \[ \sigma = \dfrac{ne^2\tau}{m} \] と計算された。銅の場合に値を計算してみよ。ただし銅の自由電子密度を\( n=8.5\times 10^{28} \mathrm{m}^{-3} \)、 緩和時間\( \tau \)は、平均自由行程\( \ell = 4.0\times 10^{-8} \mathrm{m}\)を電子の特徴的な速度\( v=1.6\times 10^6 \mathrm{ms^{-1}}\)で割ったものとして求めよ。 その他の数値は理科年表などで調べよ。
Quiz 4(5月7日出題)
ベクトル微分演算子\( \nabla \)およびベクトル値関数\( \boldsymbol{A} \)に対し \[ \nabla \times ( \nabla \times \boldsymbol{A}) = \nabla (\nabla \cdot \boldsymbol{A} ) - \nabla^2 \boldsymbol{A} \] となることを示せ。
Quiz 5(5月14日出題)
誘電率\( \epsilon \)をもつ誘電体の領域が3次元空間中の\( z \le 0 \)の領域に広がっているとする。\(z >0 \)は真空であるとする。真空中から\(z \)軸に平行に\( \boldsymbol{E_0 } = - E_0 \boldsymbol{e}_{z} \)という電場を誘電体に加えた。また誘電体中には実電荷は存在していないとする。
- 誘電体内部の電場\( \boldsymbol{E}\)および電気分極\( \boldsymbol{P}\)を\( \boldsymbol{E_0} \)をつかって表せ。
- 誘電体の\(z = 0\)の表面に誘導される誘導電荷密度の大きさを求めよ。
Quiz 6(5月21日出題)
原点にある磁気双極子モーメント\( \boldsymbol{m} \)が点\( \boldsymbol{r} \)につくるベクトルポテンシャルは \[ \boldsymbol{A}(\boldsymbol{r}) = \dfrac{\mu_0}{4\pi} \dfrac{ \boldsymbol{m} \times \boldsymbol{r}}{\lvert \boldsymbol{r} \rvert^3} \] である。このベクトルポテンシャルが表す磁束密度\( \boldsymbol{B} \)を計算し、結果が磁気双極子モーメントが作る磁束密度と同じことを確認せよ。
Quiz 7(5月28日出題)
講義で、半径\( a\)の無限に長い円柱型常磁性体(透磁率\( \mu \))に一様に電流 \( I \)が流れているときの、磁場\( \boldsymbol{H} \)と磁束密度\( \boldsymbol{B} \)を取り扱った。復習も兼ねて以下の問いに解答せよ。
- 磁場を、半径が\( r >a \)と\( r < a \)の場合に分けて導出せよ。
- 同様に磁束密度を求めよ。
- 同様に磁化を求めよ。
- 円柱型常磁性体内部の有限領域\( r < a , 0 \le z \le L \)における磁場に関するエネルギーを求めよ。
Quiz 8(6月4日出題)
半径\( a \)の球内に一様に磁化\( \boldsymbol{M}=M_0 \boldsymbol{e}_z \) が存在する時、 球の表面にあらわれる磁化電流\( \nabla \times \boldsymbol{M} \)を求めよ。
Quiz 9(6月18日出題)
\( \boldsymbol{D} = \epsilon \boldsymbol{E}, \boldsymbol{H} = \boldsymbol{B}/ \mu \) をみたす常誘電、常磁性体に対し、局所的なエネルギー密度\( u \)は \[ u = \dfrac{1}{2} \boldsymbol{E} \cdot \boldsymbol{D} +\dfrac{1}{2} \boldsymbol{B} \cdot \boldsymbol{H} \] である。物質中に実電場も実電流も存在しないとき、物質中のPoyntingベクトル\( \boldsymbol{S} = \boldsymbol{E} \times \boldsymbol{H}\) がエネルギー保存則 \[ \dfrac{\partial u}{\partial t} + \nabla \cdot \boldsymbol{S} =0 \] を満たすことを、実電場も実電流も存在しないときの物質中のMaxwell方程式をつかって示せ。 (ヒント: エネルギー密度を時間で微分しMaxwell方程式をつかって時間微分を消去する。)
Quiz 10(6月25日出題)
可視光線では\( \mu_1 \simeq \mu_2 \)であることを使って、 垂直入射\( \alpha = 0\)のときの反射率が \[ \left\lvert\dfrac{E_0’’}{E_0}\right\rvert^2 = \dfrac{(n_1-n_2)^2}{(n_1+n_2)^2} \] となることを、二つの独立な偏光状態に対して示せ。
Quiz 11(7月2日出題)
\( N \)個の抵抗値\( R_i \enspace i=1,2,\dots,N \)をもつ抵抗を並列につなぐ。 この並列につないだときの合成抵抗をキルヒホッフの法則にもとづき導出せよ。
Quiz 12(7月9日出題)
抵抗値\( R \)の抵抗と電気容量\( C \)のキャパシタが直列につながれており、この二つの素子のみで閉回路が構成されているとする。 時刻\( t=0 \)で、キャパシタに電荷が\( q(0) = q_0 \)蓄えられていたとする。
- 時刻\( t \ge 0 \)で、キャパシタに蓄えられている電荷の大きさを求めよ。
- 抵抗で発生するジュール熱の総和 \[ \int_0^\infty R I(t)^2 dt \] が元のキャパシタに蓄えられていたエネルギーと等しいことを示せ。
Quiz 13(7月16日出題)
抵抗値\( R \)の抵抗と自己インダクタンス\( L \)のコイルが直列につながれており、 そこに振幅\( E_0 \)、角振動数\( \omega \)の交流起電力を接続する。
- 回路全体のインピーダンスを求めよ
- 回路に流れる電流の振幅、および位相のずれを求めよ
Quiz 14(7月23日出題)
抵抗値\( R \)の抵抗と、電気容量\( C \)のキャパシタ、自己インダクタンス\( L\)のコイルが並列につながれている。 これに交流起電力\( \mathcal{E} = \mathcal{E}_0 e^{i \omega t} \)をかけたときの、電流の振幅を求めよ。
評価
期末試験(60%)、及びQuiz等(平常点 40%)で判断する。シラバスに従う。
文献
電磁気学詳論Iでつかった教科書や資料は参考になります。 それ以外の参考書、演習書などをあげおきます。 参考書は、詳しい内容や教科書以外の記述を見たくなった場合に利用してください。 すべて大学図書館にあると思います。
- 参考書: 前野昌弘「よくわかる電磁気学」東京図書
- 参考書: 太田浩一「電磁気学の基礎I」東京大学出版会
- 参考書: 太田浩一「電磁気学の基礎II」東京大学出版会
- 参考書: J. D. ジャクソン(著)、西田稔(訳)「電磁気学(上)」吉岡書店
- 演習書: 後藤憲一、山崎修一郎(編)「詳解電磁気学演習」共立出版